昨今、テレワーク制度を導入している中小企業も増えてきています。
テレワーク導入を検討しているもののどのように導入するのか?まずは導入前に運用ルールや規定ガイドラインなどが知りたいはずです。
導入に向けて知っておくべきこと、そしてすでに導入している企業の事例を元にお伝えしていきます。テレワーク運用に向けて理解を深めておきましょう。
テレワークに関する運用ルールや規定、ガイドラインは正式名称として「テレワーク勤務規定」と呼ばれているため、本記事ではテレワーク勤務規定として解説していきます。
テレワーク導入に向けてルール作成前に知っておくべきこと
テレワーク導入に向けて厚生労働省が発表している平成26年度テレワークモデル実証事業テレワーク活用の好事例集、もしくはテレワークモデル就業規則〜作成の手引き〜を参考にすることをオススメします。
まずはテレワークを導入するに当たり、テレワーク勤務規定を作る前に知っておくべき内容についてお伝えしたいと思います。
就業規則を変更する必要はあるのか
テレワークを導入しようと考えた場合の大きな疑問点は就業規則を変更しなければいけないのか?という点でしょう。
結論から言うと多くの企業では直接就業規則を変えるのではなくテレワーク勤務規定を別途追加の付則として作成しているケースが多いです。
重要なのは通常勤務とテレワーク勤務で労働時間制度や労働条件が大きく変わるのかどうかということです。これが同じであれば就業規則の変更等は必要ありませんがテレワークを導入する際に気をつけるべき内容は複数あります。
就業規則の一部に「テレワーク勤務規定」として作成を!
週1,2日程度の在宅勤務は制度変更や規定追加の必要はない
おおよそ週に1,2日程度のテレワークの場合はどの企業も特別な規定などは設けていないのがほとんどです。
週1,2日程度であれば本人の仕事全体への影響も少なく、上司や同僚などの周りとのコミュニケーションや仕事のやりとりに支障をきたす恐れもさほどないため、制度などによる規定をしていない場合が多いと考えられます。
外出規定をテレワークのルールとして適用する企業も多い
営業などの仕事に関係してくる外出規定を元々定めている会社は多くあり、この外出規定をそのままテレワークのルールとして適用している企業も多く存在します。
このようにテレワーク勤務規定を定めずにすでにある就業規則内でとどめている企業も少なくはないですが基本的にはテレワーク勤務規定の作成を推奨します。
その理由としては細かな事態が発生した時にテレワーク勤務規定にて正しく定めておくことで大きなトラブルが生まれにくくなるためです。
運用ルール「テレワーク勤務規定」で定めるべき内容
では、具体的にテレワークの勤務規定・運用ルールを定める時に必要な項目についてお伝えしていきます。
テレワーク勤務規定を定める上で重要な観点は以下の6項目です。
- テレワーク対象者の選定
- 労働場所
- 労働時間・勤務時間
- 業務管理
- 人事管理・人事評価制度
- 業務費用負担
- 勤務中の安全確保
これらの項目ごとにどのような形態や視点で選定していけばいいのかをそれぞれ詳しくお伝えしていきます。
テレワーク対象者の選定
まずはテレワークの対象者の範囲設定が必要となります。社員全員を対象とするのか、それとも特定の条件の社員のみの適応するのか。
特定の条件を定める場合も様々あります。
テレワークは業種や業務によっては全社員に適応することが難しい企業も多くあります。その場合は対象の業務のみテレワーク導入を取り入れるのも一つの方法でしょう。
労働場所
まずは労働場所についてですが、テレワーク時の就労形態としては主に3パターンあります。
《在宅勤務》
オフィスへの出社ではなく社員が在宅のままテレワークという形で勤務する形態を指します。
在宅勤務の場合は「通勤」という社員の大きな負担を取り除くことができます。また、育児や介護が必須となる社員へは在宅勤務の導入は大きな一歩となるでしょう。
《サテライトオフィス勤務》
会社オフィスではなく、社外のオフィスに勤務する形態を指します。遠隔地勤務用に施設を利用して勤務をすることを指すため、施設利用型勤務とも呼ばれます。
最近は数社が共同でサテライトオフィスとして運用する形式のものや特定期間のみレンタルしてサテライトオフィスとして利用する企業も増えてきています。
会社オフィスに勤務するよりも通勤時間を削減できるメリットがあります。遠隔地に別途オフィスがあることで社員の利便性はもちろん、勤務地が都市圏から郊外に広がることで地域活性化にもつながる施策とも言われています。
《モバイル勤務》
主に移動途中のカフェや施設を一時利用して働く勤務形態を指します。
営業職などで普段から社外へ外出する業務を担当している社員が営業先から会社オフィスまでの行き来などの無駄な移動を減らせることが大きなメリットと言えます。出張を伴う業務の場合も出張先ホテルでの仕事はモバイル業務に含まれます。
これらの勤務形態を考慮し、テレワーク勤務規定に導入しましょう。
労働時間・勤務時間
会社オフィスへの勤務ではなくなるため、労働時間の把握や管理方法を考える必要があります。
現状の勤怠管理がシステム化されていない場合や、オフラインでの勤怠管理をしている新しいオンライン上で完結する勤怠管理システムの導入が必要となるでしょう。
また、業務中も本当に業務をこなしているのか?が見えないという部分も経営面では大きな不安要素となるでしょう。その場合は在籍管理のツールや監視ツールが必要となってきます。リアルタイムで把握できるツールは多数あります。
↓監視ツールに関しては以下の記事にて詳しくお伝えしています。
業務管理
労働時間の把握とともに必要となってくるのは業務管理です。社員ひとりひとりがどの業務をどのくらいのペースでこなしているのか?はテレワークになってしまうと把握しにくくなります。
そのため業務の進捗が明確にわかるツールの導入も必要となってくるでしょう。もしくはツールを導入せずともメールやチャットツールなどでの報告義務を取り入れるという方法もあります。
人事管理・人事評価制度
テレワーク中であれば従来の人事評価制度が適応しにくい場合も考えられます。その場合はテレワークに適応する人事評価制度の仕組みを作成する必要があります。
特に出社している社員とテレワークで働く社員それぞれがいる場合は不公平にならないようにどのように評価するのかということは明確にしておいたほうがいいでしょう。
業務費用負担
会社への通常勤務からテレワーク勤務にシフトすることにより、新たに発生するコストも出てくることが考えられます。
テレワーク中にかかった費用についてはしっかりと定義する必要があります。本来会社に出社していればかからなかったはずの費用は会社に負担してもらいたいと思う社員も多くいるはずです。経費の処理に関しては明確にしておきましょう。
勤務中の安全確保
労働基準法にて労働している時間は雇用主が健康や安全に配慮するということは義務付けられているため、テレワークでの勤務中もしっかりと配慮する必要があります。
ただし、テレワーク中の健康管理や安全に関しては社員ひとりひとりに配慮してもらうケースが多くなってしまいます。テレワーク中であっても労災は適応されるため、社員ひとりひとりへの安全への配慮や健康への配慮に関しては明確に伝えておくことをオススメします。
テレワーク勤務規定の主な規定事例
ではどのようなテレワーク勤務規定が導入されているのか?その具体的な内容についてもお伝えしていきたいと思います。ここでご紹介する事例はテレワークモデル就業規則〜作成の手引き〜を参考にお伝えしております。
《テレワーク対象者の選定に関する規定例》
この規定の特徴は在宅勤務を「希望する」人を対象としている部分にあります。あくまでも本人の意思に委ね、希望する人に関しては最大限の考慮をする規定となっています。
ただし、すぐに簡単に在宅勤務ができるわけではなく許可が必要だということも明記しておくことが必須と言えるでしょう。
追加で記載できる内容としては具体的な申請方法でメールにて申請できるのか、もしくは直接所属長に申請しなければいけないのかを明記するとなお良いでしょう。
また、在宅勤務を希望する場合でも特定の対象者に限定する場合はその項目を作成すべきです。例えば、育児や介護もしくは傷病等で在宅勤務をせざるを得ない人のみを対象とする場合はその文言を追加しましょう。
他にも事例としては勤続年数によって限定する場合もあります。具体的には「勤続年数3年以上かつ在宅で円滑に担当業務をこなせる者」と言った条件を加えている事例があります。
《テレワークにおける労働場所の定義に関する規定例》
テレワークにおける労働場所は3パターンあります。取り入れる労働場所に関して明確なテレワーク勤務規定を選定しましょう。
労働場所の定義を明確にする規定の事例が基本となります。
《テレワークにおける労働時間・勤務時間に関する規定例》
労働時間については通常業務に関する就業規則がすでに存在しているはずです。この就業規則に付随してテレワーク勤務規定ならではの項目について追加で定義しておくのがオススメです。
こちらの事例であれば始業と就業時刻や休憩時間の変更を許可する形となっています。また、育児や介護などの際は勤務短縮措置を取りその場合の給与についても明言する形と取っています。
勤務時間についての規定はなによりも明確にしておくべき要素なので不備のないように定めましょう。
《テレワークにおける業務管理や業務報告に関する規定例》
業務管理や業務報告に関する規定としてはテレワーク勤務規定にて「業務報告の義務」を明言する事例が多くなっています。
管理ツールでの管理ももちろんですがテレワーク勤務規定にて業務報告の義務を設けるのが得策と言えるでしょう。
《テレワークにおける人事管理・人事評価制度の規定例》
人事管理・人事評価に関して大きく関わってくるのは給与に関する規定です。通勤手当に関する規定はもちろんですが、評価制度に関する規定も設けておくといいでしょう。
また、在宅勤務に関する手当を導入している企業もあります。
人事異動に関してもしっかりと規定に追加している企業事例もあります。人事関係は様々な視点で規定を設けておくといいでしょう。
《テレワークにおける業務費用負担の規定例》
テレワークになったことで社員が負担せざるを得ない費用が追加されてきます。その中でも特にかかる費用は通信費とパソコンなどの備品に関する費用でしょう。
通信費に関しては会社負担とする場合がほとんどですが水道光熱費はどこまでは費用として追加されたのかが不透明な部分もあるため勤務者の負担とする場合が多いです。
ただし、場合によっては在宅勤務に関して通信費や水道光熱費を含め、毎月決まった金額を在宅勤務手当として支給している事例もあります。
《テレワークにおける勤務中の安全確保に関する規定例》
(災害補償)
第17条 在宅勤務者が自宅での業務中に災害に遭ったときは、就業規則第◯上に定めるところによる
(安全衛生)
第18条 会社は、在宅勤務者の安全衛生の確保及び改善を図るため必要な措置を講ずる。
2 在宅勤務者は、安全衛生に関する法令等を守り、会社と協力して労働災害の防止に努めなければならない
勤務者の安全確保は労働基準法にて義務化されているのでテレワーク時の場合もしっかりと明言しておく必要があります。
ただし、勤務者を直接管理するのは会社への出勤ではないので厳しいです。ですので必ずテレワーク勤務規定では勤務者本人が労働災害防止に努めるという文言を追加しておくことをオススメします。
まとめ
今回はテレワークを導入する上で必須となるポイントとその事例についてお伝えしてきました。
テレワーク勤務規定を作成するとともに導入すべきツールや確実な通信の導入も必要となるでしょう。中小企業が導入すべきサービスなどのアドバイスを弊社では行っております。
テレワーク勤務規定の作成とともに快適にテレワーク勤務ができる環境を整えましょう!
この記事では、「中小企業でテレワークを取り入れる際の運用ルールや規定ガイドライン」についてお伝えしていきます!