物流業界のIoT導入事例3選
人力によるミスを防ぐ倉庫管理システム
数多くの品物が出入りする倉庫では、在庫の数が合わないトラブルが発生する確率が高くなります。
そしてその原因は、ほとんどがヒューマンエラーによるものです。
紙の伝票を見ながらエクセルに数字を入力する際に打ち間違えたり、そもそも保管場所を間違えていたり、指示されたものとは違う商品を出庫してしまったり。
このような、倉庫作業内で起こる人為的ミスを最小限にするために登場したのが倉庫管理システム(WMS)です。
倉庫管理システムの大きな特徴は、物の流れが一元的に管理できることです。
ひとつひとつの品物に取り付けられたバーコードなどを専用端末で読み取り自動的にデータ化することで、次の様なことが可能になります。
- 現在の在庫数、出荷予定時期とその数、次回入荷予定時期とその数などを正確に把握
- 誤出荷や誤入荷の防止
- 端末の操作を覚えればベテラン、初心者関係なく作業できる
- 賞味期限データを見ることで廃棄ロスや逆転出荷を防止
- 保管場所データを端末で確認しながら品物を探せるようになり、スムーズなピッキングができる
- 棚卸し作業の効率化
このように、まず第一のメリットとしては倉庫内の作業効率を上げることにつながります。
ここからさらにデータが蓄積してくれば、品物ごとに最も入出庫に効率のよい場所を突き止めることにもつながります。
のちのちデータが活用できることもメリットとなります。
倉庫管理システム(WMS)を導入している企業例
株式会社ダスキン・明治ロジテック株式会社・株式会社ファンケル・株式会社ファミリーマート・丸善株式会社など 他中小企業でも多数
仕分けの高速化、作業者にも優しい自動倉庫システム
自動倉庫システムとはその名の通り、今まで人がおこなっていた品物の仕分けを機械制御でおこなう仕組みのことです。
品物に取り付けられた識別タグを読み込んで、最適な場所に品物を仕分けたり、ラベルを貼ったりしていきます。
例えば冷凍倉庫など、人が長時間いるのに負担がかかる環境では作業者の健康が心配されます。また、品物の仕分け作業の効率も落ちます。
これを機械が代わってやってくれれば、作業者の負担は最小限で済むのです。
そして一定のスピードで正確な動きをする機械であれば、仕分けミスを防ぎ、しかも高速で作業を終わらせることができます。
先に紹介した倉庫管理システム(WMS)とデータを連係させれば、倉庫管理のほとんどが自動化。
物流を省力化した上でスピードアップに導きます。
自動倉庫システムを導入している企業例
日本赤十字社血液センター・株式会社ベイシア・日本通運株式会社・株式会社タカラトミーなど
データに基づく輸送最適化が可能な配車システム(TMS)
物流業界のもう一つの要である運送では、いかに効率よく配送車を動かしていくかが重要です。
荷物に対して必要な配送車やドライバーの数は?輸送ルートと交通状況は?輸送コストは?配達希望時刻は?
様々な条件を照らし合わせて配送計画を立てる必要があり、これを今までは人(配車係)が担当していました。
人手不足で悩む配送業者にとっては、配車係で人員を必要とするのは悩ましいことです。
しかも複雑な判断を必要なため誰もが正しくできる業務ではなく、勘が外れてしまって遅延が発生したり、配車係の退職で業務全体に支障が出たりすることがありました。
このような、配車にまつわるお悩みを解決するために登場したのが配車管理システム(TMS)です。
配車管理システムでできることは「配車業務の自動化」です。
その日配送予定の品物と使用できる配送車のデータを登録すれば、システムが自動的に配送計画を導き出してくれます。
その配送計画は、道路状況や輸送コストを踏まえた上で提案される最適な計画です。
さらには、運行中の配送車の状況も把握できます。
事故などで予期せぬ渋滞が起きた時には、到着時刻の自動修正や空いている配送車の情報を見られるなど、すぐに対応できる体制を整えられます。
これら一連の配車業務をシステムが代わりにおこなうことで、人手不足の解消や輸送の効率化、コスト削減など、様々なメリットが期待できます。
配車システム(TMS)を導入している企業例
株式会社イトーヨーカドー・双葉運輸株式会社・株式会社日立物流・東芝ロジスティクス株式会社・日本通運株式会社など 他中小企業でも多数
IoTの最大活用をするために「今できること」とは
人による作業が情報通信によって省力化され、さらに作業の正確性や効率も上がることが分かりましたね。
近い将来、このようなIoTソリューション導入を試みるならば、まずは今注目すべきポイントがあります。
それは「現在の通信環境」です。
優秀なIoTソフトウェアを導入したとしても、それを操作するパソコンのスペックが不十分であれば作業効率は上がりません。
通信速度が遅いインターネット回線を使う場合もそうです。
IoT化は、ネットワークを通じたデータの送受信と蓄積がスムーズにおこなえてこそ成り立つものだからです。
IoTの恩恵を最大限に受けるには、まずは自社のネットワーク環境を最適な状態に持っていくことが先です。
「最適な状態」とは、”通信設備を増やす”という意味だけにとどまらず、”無駄な機器や回線契約を見直す”ことも含まれています。
複数の業者との契約でブラックボックス化しやすい企業の通信環境は、IoT時代の到来をきっかけに見直すチャンスが来ています。
数年後、蓄積された物流データを活かして目覚ましい成長を遂げるために、まずは基礎となる通信環境を整えていきましょう。
様々な業界で注目され始めている「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」
これまで人力に頼る比率が大きかった物流業界においても、IoTを活用した業務効率化や生産性アップが進んできています。
あらゆるモノがインターネットに接続し、一連の動作のデータを収集。蓄積されたデータを解析して最も適した答えを出すという技術は、物流業界にどんな具体的メリットをもたらすのか?
事例を見ながら「今できること」も含めイメージしていきましょう。