ハンコ文化が根強い日本では、テレワーク中であっても「契約書に押印するために出社する」という事例が。
そんなちぐはぐな状況を打開するために、政府が「契約書にハンコは不要」と発表しました。
しかし、取引先の文化によっては、やはり押印がある契約書の方が受け入れられることもあります。
そこでこの記事では、電子化された印鑑のメリット・デメリットや、デジタル契約書の安全な交わし方についてお伝えします。
これから契約書を紙ベースからデジタルに移行しようと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
契約書に押印は必須ではない!?
「押印のない契約書は、契約書として成立するのか?」
「もし法的な争いになったとき、不利にならないのか?」
「せめて、電子化された印鑑だけでも押しておいた方が良いのではないか?」
ハンコ不要の契約書に関して、このような懸念が湧いてくることでしょう。
これに対して、政府が書面にて発表した内容は次の通りです。
特段の定めがある場合を除き、契約に当たり、押印をしなくても、契約の効力に影響は生じない。
文書の成立の真正は、本人による押印の有無のみで判断されるものではなく、文書の成立経緯を裏付ける資料など、証拠全般に照らし、裁判所の自由心証により判断される。他の方法によっても文書の真正な成立を立証することは可能であり、本人による押印がなければ立証できないものではない。
※2020年6月19日発表 内閣府「押印についてのQ&A」より引用
これまで契約が交わされた絶対的証拠として認識されていた押印ですが、法的には絶対的証拠ではなく「証拠の一部」という解釈になるようです。
つまり、ハンコ以外の事実も、契約書を交わした証拠として使えるということです。
- 文書や契約の成立過程が保存されたもの(メール、SNS上でのやり取り)
- 契約締結前の段階で保存された本人確認情報
- 電子署名や電子認証サービスを使って保存された情報
などが例として挙げられています。
つまり、押印されていない契約書でも、オンライン上で契約成立に向けたやり取りが交わされていれば、その文書は有効となるのです。
電子化された印鑑のメリット・デメリット
それでも日本の商習慣上、取引先によっては押印のない契約書に不信感を抱くこともあるでしょう。
そこで最近、デジタル文書によく押されているのが「電子印鑑」です。
電子印鑑とはその名の通り、印影がデータ化されたもの。パソコン上の契約書データにそのまま押印ができます。
これを利用すれば、「署名+印鑑」という契約書の体裁をデジタル文書でも整えられるため、取引先に違和感を与えることは少なくなります。
しかし、電子印鑑には1つ大きなデメリットがあります。
それが「複製のリスクが極めて高い」ということです。
特に、フリーソフトやWord、Excelで簡易的に作ったもの、実際の印鑑の印影をスキャンして作ったものは複製が簡単にできてしまいます。
契約書の体裁を整えるために作った電子印鑑で、セキュリティ性が損なわれてしまう。これでは本末転倒です。
契約書を安全に電子化するために
電子印鑑の複製や文書の内容の改ざんを防ぐには、
- 電子署名
- タイムスタンプ
この2つを含んだデジタル契約書を作ります。
電子署名とは、その文書を本人が作ったと証明する仕組みです。デジタル文書に複製できない固有のIDを付与し、送り先には証明書を発行します。
送り先がデジタル文書を受け取り、証明書と付与されたIDが同じかどうかを確かめることで、その文書が本物であると確認できます。
一方でタイムスタンプは、電子署名の安全性をさらに高める役割を果たします。
電子署名が押された時刻を記録することで、その時刻に本物のデジタル文書が存在していたこと、その時刻以降に文書が改ざんされていないことの証明や確認につながります。
契約書の押印を電子化する、つまり、紙を使うことなくデジタルで契約を取り交わしたい場合、「電子署名」と「タイムスタンプ」の2つの技術が備わっている方法を採用する必要があります。
押印も可能!契約書の電子化におすすめのサービス
政府が「契約書にハンコは不要」と宣言したものの、まだまだ押印のされていない契約書に違和感を覚える企業も多数あります。
そこで、電子印鑑の押印もできつつ、電子署名とタイムスタンプ機能の備わった「電子契約サービス」を4つ紹介します。
①GMO電子印鑑Agree
弁護士が監修している電子契約サービスです。手続きがすべてオンライン上でおこなえ、最短数分で契約締結が完了します。
Salesforceなどの顧客管理システムとの連携も可能なので、どのクライアントとどんな契約を結んだのか?情報が整理しやすい仕様になっています。
②Adobe Sign
モバイル対応している電子契約サービスです。どこからでも署名したり、文書の処理状況を確認できます。
銀行でも導入事例があり、セキュリティに信頼の置けるサービスです。
③DocuSign
印鑑メーカーの大手シャチハタが提供する電子契約サービスです。利用している印鑑を電子化できます。
40カ国以上の言語に対応しているため、グローバルにビジネスを展開する企業に向いています。
④CLOUDSIGN
月5件まで無料で利用できる電子契約サービスです。3ステップで契約完了できるシンプルな操作性が特徴。
弁護士ドットコムが運営していることから、大手企業からの信頼も厚く導入実績が数多くあります。
契約書の電子化をきっかけに、社内ネットワークのセキュリティも見直しましょう
契約書を電子化することは、契約書がインターネットとつながることを意味します。
相手にメールなどで送ることはもちろん、社内のパソコンの中に保存してあったとしても、そのパソコンがインターネットに接続されていれば同じです。
インターネットを経由した社内ネットワークへの不正アクセスは、日々起こっています。
デジタル文書をはじめとした大切なデータは、社内ネットワークそのもののセキュリティ性を見直して守りましょう。
これからテレワークが推進されると、ますます情報の電子化が進みます。
契約書の電子化を考えている方は、改めて、情報セキュリティに向き合う時にあるのかもしれません。
2020年6月、テレワーク推進の観点から、政府が「契約書にハンコは不要」という見解を出しました。
これに伴い、契約書の電子化が一気に進む可能性があります。