パソコンの経費処理は導入方法によって違いがあるのでしょうか。
パソコンの導入は主に3つの方法があります。
3つの方法は購入・リース・レンタルですが、経費にどのくらい影響があるのでしょうか。
できればうまく経費に計上して節税できる方法を選びたいものです。
今回はパソコンの経費についてご紹介します。
購入・リース・レンタルの経費の違いがわかる内容になっています。
パソコンを購入した場合の経費処理
パソコンを購入した場合の経費処理はパソコンの購入金額によって違い、大きく分けると2パターンあります。
2つのパターンは10万円未満と10万円以上です。
10万円未満のパソコンを購入した場合
パソコンの購入金額が10万円未満の場合は「消耗品費」という勘定科目で、購入したときに全額経費になります。
例えば1台8万円のパソコンを現金で購入したときの仕訳は以下です。
借方 | 貸方 | ||
消耗品費 | 80,000円 | 現金 | 80,000円 |
パソコンを支払った金額すべてが経費になるので、節税効果が期待できます。
10万円以上のパソコンを購入した場合
パソコンの購入金額が10万円以上の場合は「工具器具備品」という勘定科目で計上され、この段階では経費になっていません。
工具器具備品は貸借対照表の資産科目です。
例えば1台15万円のパソコンを現金で購入したときの仕訳は以下です。
借方 | 貸方 | ||
工具器具備品 | 150,000円 | 現金 | 150,000円 |
1台あたりの取得価額が10万円以上になると減価償却資産として資産計上され、法定耐用年数によって数年にわたって経費になります。
パソコンを何に使うかによって経費の金額を計算する基の耐用年数が違い、具体的には以下のようになっています。
法定耐用年数 | |
パソコン | 4年 |
サーバー用のパソコン | 5年 |
参考:「主な減価償却資産の耐用年数表」(国税庁)
さらに減価償却費の償却方法は「定額法」と「定率法」の2つあります。
「減価償却資産の償却方法の届出書」を提出すると償却方法を変更できますが、届出書を提出していない場合は法人と個人事業主で違います。
償却方法 | |
法人 | 定率法 |
個人事業主 | 定額法 |
定額法は一定の金額が経費になる計算、定率法は初年度は経費になる金額が多く徐々に減価償却費が減っていく計算方法です。
10万円以上20万円未満のパソコンは「一括償却資産」
10万円以上20万円未満のパソコンをした場合「一括償却資産」として減価償却資産を計算することができます。
一括償却資産は3年間で経費になり、パソコンの法定耐用年数4年または5年に比べると短い期間で経費に計上することが可能です。
また一括償却資産に該当しても、通常の定額法や定率法で計算することはできます。
参考:「減価償却のあらまし」(国税庁)
20万円以上30万円未満のパソコンは「少額減価償却資産」
20万円以上30万円未満のパソコンは「少額減価償却資産」として減価償却費を計算することができます。
減価償却資産は購入した時に全額経費にできますが要件があります。
・中小企業者等または常時使用する従業員が1,000人以下の個人 ・青色申告 ・300万円が限度 |
少額減価償却資産は青色申告を提出していることが要件なので、白色申告の場合は該当しません。
白色申告で20万円以上のパソコンを購入した場合は定額法または定率法で減価償却費を計算します。
参考:「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」(国税庁)
個人事業主がパソコンを購入した場合
個人事業主がパソコンを購入した場合、基本的にはここまでの方法で経費処理されます。
しかしプライペート用と事業用で兼任されている場合は、家事按分が必要です。
例えば1台8万円のパソコンを現金で購入し、20%プライベート使用するときの仕訳は以下です。
借方 | 貸方 | ||
消耗品費 | 64,000円 | 現金 | 80,000円 |
事業主勘定 | 16,000円 |
事業主勘定16,000円(80,000円×20%)がプライベート用の金額です。
家事按分した結果、事業用のパソコンが10万円以下になっても、家事按分する前の金額が10万円以上であれば消耗品日ではなく工具器具備品で処理します。
パソコンを購入した場合の経費処理のまとめ
パソコンが10万円未満の場合は「消耗品費」として経費処理します。
また10万円以上は購入金額によって、償却方法は異なりまとめると以下です。
一括償却資産 | 少額減価償却資産 | 定額法または定率法 | |
10万円以上20万円未満 | ◯ | ◯ | ◯ |
20万円以上30万円未満 | ◯ | ◯ | |
30万円以上 | ◯ |
パソコンをリースした場合の経費処理
パソコンをリースした場合の経費処理は、リース期間やリース契約の内容などによって3つのケースが考えられます。
所有権移転ファイナンス・リース取引の経費処理
所有権移転ファイナンス・リース取引は通常の購入と同様の売買処理をします。
ファイナンス・リース取引とはリース期間中の解約不能かつフルペイアウトの取引です。
また所有権移転ファイナンス・リース取引はリース期間が終了した後、リース資産の所有権が借手に移動します。
そのためリースですが通常の売買と同じと考えられ、売買処理されます。
例えば50万円のパソコンをリース(所有権移転ファイナンス・リース)した時の仕訳は以下が考えられます。
借方 | 貸方 | ||
リース資産 | 500,000円 | リース債務 | 500,000円 |
リース資産は貸借対照表の資産科目なので、この仕訳の時点では経費処理されていません。
所有権移転ファイナンス・リース取引は自社で購入したときと同様の償却方法で、法定耐用年数に応じて経費処理されます。
またリース取引の総額が300万円、事業内容上重要でない資産の場合は賃貸借処理が可能です。
所有権移転外ファイナンス・リース取引の経費処理
所有権移転外ファイナンス・リース取引の購入時の処理は、基本的には所有権移転ファイナンス・リース取引と同様です。
しかし減価償却費の計算方法が異なり「リース期間定額法」で計算された金額で経費処理されます。
所有権が移転しないため所有権移転外ファイナンス・リース取引の減価償却費は、リース期間に応じて減価償却費が計算されます。
オペレーティング・リース取引の経費処理
オペレーティング・リース取引の処理は「リース料」として経費処理されます。
例えばリース契約にもとづき、リース料1万円が口座から引き落としされた時の仕訳は以下です。
借方 | 貸方 | ||
リース料 | 10,000円 | 普通預金 | 10,000円 |
オペレーティング・リース取引はファイナンス・リース取引以外の取引のことです。
口座から引き落としされた金額が経費になるので、ファイナンス・リース取引に比べて処理方法がわかりやすいです。
個人事業主がパソコンをリースした場合
個人事業主がパソコンをリースした場合、基本的にここまでと同様にファイナンス・リース取引は売買処理、オペレーティングリース取引は賃貸借処理です。
しかしリースしたパソコンを、プライベート用と仕事用で併用する場合は家事按分が必要です。
どの程度プライベートで使用しているか把握すると、家事按分がわかりやすいのではないでしょうか。
パソコンをリースした場合の経費処理のまとめ
パソコンをリースしたときは、リース取引の内容によって経費処理の方法が違い、まとめると以下のようになります。
処理方法 | 償却方法 | |
所有権移転ファイナンス・リース取引 | 売買処理 | 購入したときと同様 |
所有権移転外ファイナンス・リース取引 | 売買処理 | リース期間定額法 |
オペレーティング・リース取引 | 賃貸借処理 | ー |
リース取引の総額が300万円、事業内容上重要でない資産の場合は賃貸借処理の可能です。
また中小企業は所有権移転外ファイナンス・リース取引を賃貸借処理できます。
参考:
「リース取引についての取扱いの概要(平成20年4月1日以後契約分)」(国税庁)
「所有権移転外リース取引」(国税庁)
パソコンをレンタルした場合の経費処理
パソコンをレンタルした場合「賃借料」として経費処理されます。
例えばパソコンのレンタル料8千円を振り込んだ場合の仕訳は、以下のようになります。
借方 | 貸方 | ||
賃借料 | 8,000円 | 普通預金 | 8,000円 |
リースとレンタルは似ていますが、大きな特徴は契約期間の違いです。
リースは半年から数年間物を借りることができ、レンタルは1日から借りることができます。
必要な時だけ借りたい場合は、リースではなくレンタルの選択も可能です。
個人事業主がパソコンをレンタルした場合、家事按分が必要です。
レンタルの期間が1日などの場合、プライベートで使用することは少ないかもしれませんがどの程度プライベートで使用したか把握しておくと良いでしょう。
例えば個人利用10%したパソコンのレンタル料8千円を振り込んだ場合の仕訳は以下のようになります。
借方 | 貸方 | ||
賃借料 | 7,200円 | 普通預金 | 8,000円 |
事業主勘定 | 800円 |
購入・リース・レンタルの経費処理の比較
パソコンの購入・リース・レンタルの経費処理を比較すると以下になります。
購入、所有権移転ファイナンス・リース | 所有権移転外ファイナンス・リース | オペレーティング・リース、レンタル | |
経費処理方法 | 売買処理 | 売買処理 | 賃貸借処理 |
償却方法 | 定額法または定率法 | リース期間定額法 | ー |
一括償却資産 | 購入のみ◯ | ー | ー |
少額減価償却資産 | ◯ | ー | ー |
オペレーティング・リース、レンタル以外は売買として処理します。
購入や所有権移転ファイナンス・リース取引によってパソコンを導入した場合、購入金額によって償却方法が選択できます。
また所有権移転外ファイナンス・リース取引は購入とは違い、リース期間定額法で減価償却費が計算されます。
まとめ
10万円以上のパソコンを購入すると耐用年数に応じて、徐々に経費になりますが30万円未満であれば購入時に全額経費も可能です。
リースはリース取引の内容によって購入と同様の処理されたり、レンタルと同じ賃貸処理することもあります。
パソコンの導入方法は1つではありません。
パソコンは購入・リース・レンタルと導入方法によって経費処理が異なります。
自社にあった導入方法を選択することが、大切なのではないでしょうか。