コロナ禍により一気に脚光を浴びることになったリモートワーク。
業種によって向き不向きはあるものの、リモートワークを導入することは、コロナ禍における企業活動の継続という意味合いだけでなく、新しい働き方や新しい組織のあり方としても注目をされています。
では、リモートワークの導入には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
そして、リモートワークの導入に際し、どういったところに注意すべきなのでしょうか。
リモートワーク導入に関するあれこれを解説いたします。
リモートワークとテレワークの違いとは
リモートワークとテレワークという言葉があります。
同じようなことを指しているこの2つの言葉。どのような違いがあるのでしょうか。
リモートワーク
リモートワークは、Remote(遠隔の)とwork(働く)からなる言葉で、「自宅などの会社から離れた場所で働くこと」を意味しています。
テレワーク
テレワークは、Tele(遠い、遠く離れた)とWork(働く)を組み合わせた言葉で、「ICT(情報通信技術)を利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」を指します。
「リモートワーク」と「テレワーク」はいずれも「会社から離れた場所で働く」という点で共通していますが、国や自治体などは「テレワーク」を統一用語としています。
リモートワークの導入率は?
総務省の情報通信白書令和3年版によりますと企業全体のリモートワーク導入率は、2回目の緊急事態宣言時である2021年3月1日〜3月8日時点では38.4%となっています。
なお、コロナ禍直前となる2020年3月2日〜3月8日時点でのリモートワーク導入率は17.6%でしたが、1回目の緊急事態宣言時である2020年5月28日〜6月9日には56.4%へと上昇。
その後、緊急事態宣言解除後には30%台まで一旦低下しましたが、現在はゆるやかに上昇している状態です。
コロナ禍によりリモートワークへの意識が一気に高まり、その後定着して行ったことが、この数値からも見て取れます。
リモートワークのメリット
リモートワークを導入すると、企業、従業員、それぞれにメリットがあります。
ここではそれぞれの立場から見たリモートワークを導入するメリットを解説します。
企業のメリット
リモートワークを導入した際の企業側のメリットを5つ解説します。
コストの削減
企業側のメリット1つ目は、「コストの削減」です。
具体的には以下のものが挙げられます。
- オフィス賃料の削減
オフィスに出社する必要がなくなれば、オフィスそのものが不要となります。 - エネルギーコストの削減
オフィスを利用する人数が減ることで、水道代・電気代などが削減できます。 - 消耗品コストの削減
情報共有がPC上で完結するためペーパーレス化が進み、用紙代や複合機の印刷代などが削減できます。 - 交通費の削減
オフィスに出てくる必要がなくなれば、交通費が削減できます。
打合せや商談もオンラインで行えば、出張費なども削減可能です。
人材の確保につながる
企業側のメリット2つ目は、「人材の確保につながる」ことです。
リモートワークにより時間や場所にとらわれない働き方ができるため、「決まった時間に出勤できる人」以外にも人材を求めることができます。
離職率が低くなる
企業側のメリット3つ目は、「離職率が低くなる」ことです。
2つ目のメリットとも関連しますが、時間や場所にとらわれず仕事ができるため、より従業員のライフスタイルにあわせることが可能となります。
これまでライフスタイルの変更により、離職を余儀なくされていた人も、リモートワークを導入することにより、仕事を続けることが可能となるのです。
BCP対策になる
企業側のメリット4つ目は、「BCP対策になる」ことです。
BCP対策とは、自然災害や事故、不祥事などによる事業への損害を最小限にとどめ、何が起こっても対応できるように対策すること。
リモートワークはリスクの分散に繋がり、万が一の時に直面しても事業を継続することができます。
企業のイメージがよくなる
企業側のメリット5つ目は、「企業のイメージがよくなる」ことです。
これまで挙げてきたメリットに関連する形になりますが、テレワークの導入により当該社員の働きやすさ向上や、自然災害発生時にも柔軟に事業を継続できる姿は、企業イメージに良い影響をもたらします。
従業員のメリット
リモートワークを導入した際の従業員側のメリットを4つ解説します。
通勤時間が無くなる
従業員側のメリット1つ目は、「通勤時間が無くなる」ことです。
オフィスが遠方にある場合は、相応の通勤時間がかかります。
また、思わぬ事故や渋滞などにより、通勤時間が長くなる場合もあります。
リモートワークを導入することにより、通勤時間の短縮、または通勤そのものがなくなり、今まで通勤に充てていた時間を他のことに使うことができるようになります。
拘束時間が少なくなる
従業員側のメリット2つ目は、「拘束時間が少なくなる」ことです。
リモートワークの場合、必要な時に必要なだけ自分の仕事をすることになるため、オフィスで仕事をする場合と比べ、他人からの干渉を受けにくい環境にあるといえます。そのため拘束時間が少なくなります。
生産性が上がる
従業員側のメリット3つ目は、「生産性が上がる」ことです。
これまでに挙げたメリットとも関連しますが、オフィスで仕事をしていた際のムダが、リモートワークによってなくなるため、生産性が上がります。
家庭と両立しやすい
従業員側のメリット4つ目は、「家庭と両立しやすい」ことです。
リモートワークを自宅で行う場合、家庭の用事を仕事の合間に済ませることができます。
これは、「家庭の用事の合間に仕事をすることができる」と言い換えることもでき、目を話すことのできない小さなお子さんをもつ方や、家族の介護をする必要がある方などは、リモートワークによって仕事と家庭の両立が実現しやすくなります。
リモートワークのデメリット
リモートワークの導入はメリットばかりではありません。
もちろんデメリットも存在します。企業、従業員、それぞれの立場からリモートワーク導入についてのデメリットを解説します。
企業のデメリット
企業側のデメリットを3つを解説します。
セキュリティ対策への懸念
企業側のデメリット1つ目は「セキュリティ対策への懸念」です。
例えば、従業員各自の自宅でリモートワークを行う場合、会社のコンピュータと従業員の自宅にあるコンピュータとをネットワークで繋ぐ必要があります。
その際、ネットワークに対するセキュリティは企業側でカバーすることもできますが、従業員が全員オフィスにいた時と比べると、管理は難しくなります。
場合によっては、各従業員がコンピュータセキュリティに関する知識を持つ必要も出てくることでしょう。
またオンライン上の問題だけでなく、リモートワークによって資料等を自宅に持ち込むといったオフライン時の情報管理も、これまで以上に意識を高め徹底する必要が出てきます。
労働実態の把握がしにくい
企業側のデメリット2つ目は「労働実態の把握がしにくい」ことです。
リモートワークにより、勤務時の姿はそれぞれ見えにくくなります。
あらかじめ勤務時間を設定していたとしても、その間何をやっているのかは正確にはわかりません。逆に、勤務時間外に仕事をしていることも想定されます。
そのため、特に勤務時間そのものが評価軸になっている場合は、リモートワーク導入にあわせて評価設定自体も変える必要があるかもしれません。
システムの構築費用がかかる
企業側のデメリット3つ目は「システムの構築費用がかかる」ことです。
これはこれまでに挙げたデメリットと関連することになりますが、リモート環境のセキュリティ強化や、労働実態把握に伴う新システムの導入などを行うと、相応の費用がかかることになります。
メリットの項目で「コスト削減」について解説しましたが、低コストなリモートワーク環境を作るためには、大きな初期投資がかかる場合があります。
リモートワークの導入に際しては、初期投資とその後のランニングコストとを天秤にかけて判断する必要があるでしょう。
従業員のデメリット
従業員側のデメリットを2つ解説します。
コミュニケーションがとりづらい
従業員側のデメリット1つ目は「コミュニケーションがとりづらい」ことです。
Zoomなどにより、リモートのミーティングなどは可能となりますが、そこでのコミュニケーションは必要最低限のものになりがちです。
そのためリモートワークの場合、仕事を進めることはできても、人間関係が希薄になる可能性があります。
リモートワーク導入に際しては、あらかじめコミュニケーションのとりづらさを認識した上で、より意識して意思疎通を図ることが必要でしょう。
仕事と家庭の切り替えが難しい
従業員側のデメリット2つ目は「仕事と家庭の切り替えが難しい」ことです。
これはメリットと表裏一体となっていて、例えば自宅でリモートワークをする場合は、家庭の用事に干渉される可能性があるということです。
リモート環境の整備ひとつとっても、家庭の都合がつきまといます。
1つ目のデメリット同様に、高い意識をもってリモート環境を整備することが必要なのかもしれません。
リモートワーク導入にあたって重要なこと
リモートワークを導入するにあたって重要なポイントを4つ解説します。
セキュリティガイドラインの作成
企業側の1つ目のデメリットでも解説したセキュリティへの対策として、VPNの導入や端末管理などが必要となってきます。
VPNとは一般的なインターネット回線を利用して作られる仮想のプライベートネットワークのことです。
例えば、フリーWi-Fiなどの公衆のインターネットを利用すると、個人情報を盗み見されたりデータが改ざんされたりなどのリスクがありますが、VPNを利用することで、フリーWiFiと比べてセキュリティリスクを減らすことができます。
それと並行して、セキュリティガイドラインの作成も重要です。
セキュリティガイドラインには以下のことをまとめます。
- 経営者が認識し実施すべき指針
- セキュリティ対策を実践する際の手順や手法
企業、従業員、それぞれが同じ認識のもとセキュリティ対策を進め、トラブルがあった場合でも迅速に対応できるよう備えておくことが必要です。
リモートワーク用の就業規則の作成
企業側の2つ目のデメリットでも解説しましたが、リモートワークにおいて業務実態の把握は難しいものです。
そこで、リモートワーク用の就業規則や、通信費などの規定など、労務管理についてあらためて見直す必要があるでしょう。
特に、リモートワークは各従業員の自律がより求められてくるものです。
ルールを明確にして、トラブルを未然に防ぎ、各従業員の自立性を伸ばしていければ、リモートワークは企業の成長に大いに寄与することでしょう。
従業員の業務把握
困難になりがちな従業員の業務把握のために、勤怠管理やタスク管理などをするためのシステムを新規導入することも、検討すべきことです。
クラウドサービスを用いての勤怠管理などはその1つの手段といえます。新規導入コストも抑えられるため、有効な方法といえるでしょう。
業務のオンライン化
業務をオンライン化は、リモートワークを進めること上で欠かすことはできません。
特にバックオフィス業務などは、ペーパーレス化を進めることで大きなメリットを生み出します。
もちろん情報漏洩のリスクや、申請・承認のプロセスなど、事前に環境を整えておく必要はありますが、こちらもクラウドサービスなどを使うことによって、少ない初期投資で環境を作ることが可能です。
まとめ
リモートワークを導入のメリット・デメリット、そして導入にするにあたり注意すべき重要なことを解説しました。
コロナ禍により脚光を浴びたリモートワークではありますが、コロナ以前から導入していた企業もあるように、新しい働き方、新しい組織のあり方として、コロナとは切り離して考えて良いものかと思います。
これまでの働き方以上に、各従業員に「自律」が求められるリモートワークは、企業を、そして従業員自身を大きく成長させる可能性を持っています。
ぜひ今回の解説を参考にしていただき、各企業にあったスタイルで、リモートワークを取り入れてみてはいかがでしょうか。