社内で長年使い続けてきたシステムや機器を、IoT対応のものに入れ換える。規模によってはまとまった金額が必要になりますね。
そこで新たに、IoT導入支援を目的とした法人への税制優遇が新設されました。
一定の条件をクリアすると、IoT導入費用の30%を特別償却するか、税額控除(3%もしくは5%)のどちらかを選ぶことができます。
税制優遇が適用されるのは、平成32年度末(2020年度末)まで!
まさにIoT化するなら今!と言うべきチャンスです。
「コネクテッド・インダストリーズ税制」と名付けられたこの優遇措置の内容や条件を、これから分かりやすくお話ししていきます。
コネクテッド・インダストリーズ税制の内容
対象者と対象のIoT投資額は?
【対象者】
コネクテッド・インダストリーズ税制には、青色申告をする法人・個人が申請ができます。(業種や資本金などに制限はありません)
【対象となるIoT投資額】
IoT導入によるデータ活用を前提とした事業計画案を作成して提出し、国の認定を受け、その計画に沿っておこなわれた設備投資額を基準に税制優遇が受けられます。
事業計画が認定されるための3つの条件
申請書のフォーマットは、経済産業省のWebサイトからダウンロードできます。
ここでは、申請書に書いていく具体的な内容(認定のために必要な3条件)について、詳しく説明していきます。
①IoT機器の導入目的
税制優遇を受けるには、
- 機器に取り付けたセンサーからデータを取得して、稼働状態を把握。生産性を上げるための対策につなげる
- 拠点間で在庫データなどをリアルタイムで共有し、商品を適正な場所に配置。過剰在庫の削減につなげる
- グループ企業間でデータを連携し、全体的な生産プロセスを見直す
など、設備投資をしたIoT機器が「データを取得して活用するために使われる」必要があります。
そのため申請書には、データの収集方法・データの連携方法・データの活用方法などを詳しく書いて提出します。
②セキュリティ対策について
IoTの導入に当たり、
- データへの不正アクセス対策
- システムに脆弱性がないこと
- 万が一データが漏れて被害が出た場合の対処法は決められているか?
- 通信経路のセキュリティ対策
など、情報漏洩を防ぐための対策が取られていて、さらにIT専門家の証明が必要になります。
申請書には、IT専門家の登録番号や氏名を書く欄があります。
※IT専門家とは?
→大企業であれば情報セキスペ。中小企業であれば、ITコーディネータ(外部の人でも可)
③生産性向上の見込み目標
IoT導入とデータの利活用は、生産性を向上するためにあります。
そのため申請書には、労働生産性と投資利益率について、成長の見込みを書いて提出します。
成長の見込みには、次のような基準が設けられています。
- 労働生産性について、「IoT機器を取得した年度の”翌年度から3年間の伸び率の年平均”が2%以上」になること
- 投資利益率について、「IoT機器を取得した年度の”翌年度から3年間の年平均”が15%以上」になること
※計算式は経済産業省が発表しているもの
- 導入するIoT機器の目的
- セキュリティ対策の担保
- 生産性向上の見込み目標
の3つの内容を申請書に書いて提出し、認定を受けます。
どんな設備が対象となるのか?
- センサーなどデータ収集用の機器
- データ分析により自動的に作業をおこなうロボットや機械
- データを連係して分析するのに必要なシステム(サーバー、AI、ソフトウェアなど)
- サイバーセキュリティ対策製品
などに投資した金額が対象となります。
税法上、「ソフトウェア」「機器備品」「機械装置」に分類されるものです。
これら機器やソフトウェアに5000万円以上を投資し、認定された事業計画に沿って実際に使用された場合、その取得金額に対して税制優遇がおこなわれます。
- 中古の設備は対象外になります。
- リース契約の設備については、所有権移転ファイナンスリース(リース期間終了後に設備の所有権が契約者側に移る契約)は税額控除・特別償却のどちらも対象になります。
所有権移転外ファイナンスリース(リース期間終了後も設備の所有権は業者側)の場合は、税額控除のみ対象になります。
税制優遇の内容
コネクテッド・インダストリーズ税制では、特別償却か税額控除のどちらかの優遇内容を選ぶことができます。
【特別償却】
認定された事業計画に沿って導入した機器やソフトウェアの取得価額×30%
【税額控除】
- 平均給与等支給額が前年度よりも3%以上増加した場合
→取得価額の5%を税額控除(ただし上限は法人税額の20%) - 平均給与等支給額の増加率が3%に満たない場合
→取得価額の3%を税額控除(ただし上限は法人税額の15%)
IoT導入に対して税制優遇がおこなわれる背景
この税制優遇がおこなわれる背景には、諸外国に比べてIoT活用に消極的な国内企業の空気を変えようとする目的があります。
総務省発表の「平成28年度 情報通信白書の概要」によると、日本は諸外国に比べてIoTによる業務効率化や新たなサービスの提供などが遅れており、この先生産性に大きな差が開く可能性が高いと言われています。
中小企業のIT、IoT導入状況を100例以上見てきた弊社でも、この状況は危機感を覚えます。
通信ネットワークの活用によって、人力に頼らずとも作業が捗るシステムが今はたくさん登場しています。
ですが「よく分からない」が理由で導入をせず、これまでと変わらない手間がかかる作業を続けている企業はかなり多いです。
手間のかかる作業(アナログ作業)の例
- 紙に手書きのデータ管理をしていて、いざ情報を探そうとすると時間がかかる
- 事業所ごとに分かれて情報が管理されているため、やりとりに手間がかかる
- 同じ情報を複数の機器に入力する必要がある
- 数十年前の情報管理システムを使い続けている
- 社内データが漏洩する可能性があるが、見て見ぬふりをしている
生産性の差は、そのまま業績の差につながります。
数年後に大きな開きがあることに気付いた時には、もうその差を埋めることは困難かもしれません。
IoT導入による税制優遇が今のタイミングで新設されたのは、すでに開きが出てきた諸外国との生産性の差を、最小限に食い止めるための手段だと感じます。
まとめ
IoTの導入支援を目的とした税制優遇措置が、平成32年末(2020年末)までおこなわれます。
事業計画が認定され、5000万円以上のIoT設備投資をおこなった企業(個人)は、その投資金額の30%を特別償却もしくは税額控除(3%、賃上げをおこなえば5%)することができます。
IoTに対応する機器の導入を考える際には、まずはその機器を正常に動かせるような「通信の基盤」を整えることが重要です。
- データを滞りなく送受信できる性能のネットワーク回線を引いてあるか?
- 社内のデータに不正に侵入されないよう、端末やネットワークに鍵はかけてあるか?
- 万が一データが壊れたときでも慌てないように、情報バックアップの体制は整っているか?
- 社員のIT教育は行き届いているか?
ネットワークを通してデジタルな情報をやりとりしていくには、このような下準備は欠かせません。
もしも社内にITに長けた人材がいない場合は、外部の専門家と連携するなどして「これからやろうとしていることが滞りなく進む環境」を整えましょう。
そうして基盤を整えた後にメインとなるシステムや機器を導入していけば、事業の目標達成はより現実味を帯びてきます。
弊社でも、IoTを見据えたネットワークの基盤構築のご相談を承っています。下記よりお気軽にお問い合わせください!
今回は、平成32年度末(2020年末)まで税制優遇が受けられる「IoT税制」のしくみを詳しく解説していきます!