ここ数年で一気に認知されつつある「オフィスのIoT化」
ITセミナーなどで、一度は耳にしたことのある経営者様も多いのではないでしょうか?
ですが、
「世の中にはどんなIoT製品があって、それぞれオフィスの生産性にどんな効果をもたらすのか?」
「そもそも自社にはIoT化が必要なのか?」
最先端の話題ゆえ、具体的なイメージがしづらいですよね?
オフィスの生産性アップに役立つIoT製品の特徴は、大きく分けて3つあります。
- オフィスの環境調整を自動化
- 人員配置を自動化
- 作業を自動化
です。
それぞれについて、どんな製品がリリースされているのか、これから詳しくお伝えしていきます。
そして、最先端のIoT製品を導入する前に、まずは見直しておきたい「オフィスの通信環境の基本」についてもお話しします。
(基本の通信環境が整っていないまま、IoT化を考えているオフィスは意外と多いのです・・・)
IoTは、通信ネットワークを駆使して動く仕組みです。
あなたのオフィスの通信環境がIoT導入に備えられているのか?確認してみてくださいね。
IoTは、オフィスを快適な空間に自動で調整する
「モノのインターネット」と訳されるIoT(Internet of Things)は、その名の通り「日常のあらゆるモノがネットワークにつながって便利になる」ことを表しています。
そんなIoTの特徴を活かしてオフィスへの実用化が進んでいるのが、「空調の自動調整」です。
暑い・寒い・湿度が高い・・・。オフィスの空間が快適でないだけで、仕事への集中力は下がってしまいますよね。
だからといって仕事中に頻繁に席を立ち、空調の温度を調整しに行くのもムダな行動の積み重ねとなります。
そんな問題を解決するために、オフィスの温度や湿度を自動調整して常に快適な空間を作るIoT製品が誕生しています。
空調メーカーのDAIKINでは、オフィス内のエアコンの運転状況をデータ化して分析。その日の天候に合わせて最適な空調環境を自動制御できる製品をリリースしました。
データの送受信や、空調の自動制御にインターネットを使っています。
空調機器がネットワークにつながり、自動的に快適なオフィス環境を作り上げる。IoTとオフィスの生産性の関係がよく分かる事例です。
IoTは、最も効率のよい作業導線を「見える化」する
IoTは、「今まで可視化できていなかったことの可視化」ができます。
例えば、人の動き・機会の稼働状況・通信デバイスの利用状況などです。
センサーを持ち歩いたり取り付けたりすることで、常時どんな動きをしているのか?が観察できるようになります。
さて、普段オフィス内で働く人の動きや機器の稼働状況が分かると、何がいいのでしょう?
それは「最も効率のよい動き方を導き出せる」ということです。
最も作業効率が良くなるデスクや機器の配置、人員の配置が、データを分析することで分かるようになります。
なんとなく・・・の勘でおこなっていた作業が、確実に生産性を上げられるやり方に変わるのです。
例えば、NTTコミュニケーションズが提供している「Things Cloud」という製品では、プログラミングなどの専門知識がなくても、センサーを取り付けたモノから発せられるデータの管理ができるようになっています。
※参考:NTTコミュニケーションズ「Things Cloud」
どんな業種でも必ず「人の勘に頼っている業務」があるはずです。
それらを見える化して改善していくことで、オフィスの生産性はアップできると予想されています。
IoTは、オフィスの事務作業を自動化する
データ入力や集計、書類の振り分けなど、オフィスではいわゆる「事務作業」と呼ばれるルーティンが数多くあります。
同じ作業の繰り返しは、IoTの得意分野です。
あらかじめロボットに業務内容を設定をしておけば、あとは自動的にその業務を遂行してくれます。
繰り返し作業は、人より機械のほうが正確性があります。入力ミスや報告のし忘れなど、人ならではのミスを機械はしないからです。
多くの事務作業が自動化されれば、その分浮いた時間や人員を他の業務に回すことができます。
人手不足に悩む中小企業にとっては、事務作業のIoTによる自動化は強い味方なのです。
今実用化が進んでいる製品例は、ソフトバンクの「SynchRoid(シンクロイド)」です。
導入のためのトレーニングから運用まで、全体的なサポートをおこなっています。
普段のオフィス環境や業務のどんな部分にIoTが当てはまって、どう効果につながるのか?以前よりもはっきりイメージできたのではないでしょうか?
ですが、この記事の冒頭でもお伝えしたように、IoTは「通信ネットワークを駆使して動く仕組み」です。
そのため、あなたのオフィスの通信環境が最適な状態でなければ、導入効果は半減してしまいます。
便利なIoT製品を導入するには、まず「自社の通信環境」を整えることが先です。
そして実は、自社の通信環境を今からお伝えする通りに整えるだけでも、相当な生産性アップが期待できます。
目新しい機器よりも先に、使い慣れている回線や機器に今一度目を向けてみてください。
【IoT導入前の基板作り①】作業量に見合ったPCの導入
社員の生産性を上げるために最も身近な対策は、「作業レベルに合った性能のPCを使用すること」です。
起動に時間がかかる・処理速度が遅い・使用中のソフトウェアが固まるなど、スムーズに作業ができない環境で毎日過ごすことは、長期的に見て大きな時間のロスにつながります。
どんな性能のPCを選ぶべきか?は、各オフィスの業務内容によって変わってきます。
弊社が通信環境をコンサルティングした事例では、適切な性能のPCを導入したことにより、社員1人あたり1日1時間の稼働時間削減につながりました。
1ヵ月の出勤日数を仮に20日間とすると、月20時間(3日分相当)の稼働時間削減です。
このように、PCの起動時間や処理速度にほんのわずかな違いが出るだけで、オフィス全体の生産性には大きな影響を及ぼします。
【IoT導入前の基板作り②】情報のセキュリティを高める社内サーバーの導入
顧客データや社外秘の営業データは、改ざんされたり外部に漏れてしまったりすると大きな損害を被ります。
(データの復旧や信用の回復にかかる時間的損失、損害賠償などの金銭的損失など)
そのため、しっかりと管理体制の整った容れ物に保管しておく必要があります。
社内サーバーはその「容れ物」の役割にあたります。
- 誰が、いつ、どのデータにアクセスしたか?(ログが残る)
- 誰がサーバーにアクセスできるか?(アクセス権限を制限できる)
このような管理ができるため、セキュリティの高い通信環境での作業ができるようになります。
また、社員それぞれがPCで保管しているデータを社内サーバーで共有すれば、チームでの情報共有もスムーズになります。
PCのメモリも圧迫しないので、PC自体の劣化も抑えることができます。
大きなロスにつながる情報漏洩を防ぎ、社員同士の情報共有をスムーズにする社内サーバーは、オフィスの生産性向上に役立つアイテムです。
【IoT導入前の基板作り③】複数拠点間の情報のやりとりを円滑におこなうネットワーク(VPN)構築
本社と支社のように、ビジネスの拠点が複数に分かれて存在している場合。
情報のやりとりでセキュリティが心配されたり、手順が煩雑になったりすることがあります。
例えば、本社で保管されているデータを支社が確認したい時には、電話をして担当につないでもらう必要があるかもしれません。
出張先などから社内のデータを確認したい時も同様です。
ここでもし担当が不在だったとしたら、後に再度連絡するなど時間的なロスが発生します。
このような、拠点間での情報のやりとりを安全かつスムーズにおこなうためのネットワークがVPNです。
VPNとはVirtual Private Network(仮想専用ネットワーク)のことで、拠点間をつなぐ専用の通信トンネルを作り、外部の人間がアクセスできないようにしたものです。
そのトンネルを通る情報も暗号化されるので、社内の情報が拠点間を移動する間に、不正に利用されるのを防ぐことができます。
VPNを構築すれば、拠点間のデータ送受信のセキュリティを高められます。
さらには、出先から社内データへのアクセスが可能になるため、必要な時に必要な情報がスムーズにやりとりできるようになり、生産性向上へとつながります。
専用のルーターやソフトウェアを設置するだけで導入でき、コスト面でも優れています。
【IoT導入前の基板作り④】社員の勤務態度向上につながるネットワークカメラ
ネットワークカメラとは、撮影した動画をインターネットを通じてレコーダーやPC、スマホなどに直接送信できるカメラです。
複数台のカメラの映像をリアルタイムでPCから確認できたり、遠隔地にあるレコーダーに映像を録画することができます。
ネットワークカメラでオフィス内の映像を記録していくことにより、社員の勤務態度向上につながります。
また、本社で支社の映像を一括管理して、業務の見直しや勤怠管理に役立てることもできます。
さらに、ネットワークカメラで撮影した映像は高画質であるため、AI(人工知能)を使った解析に使用することもできます。
例えば、店舗の売り場を撮影した動画をAIで解析して来店客の行動パターンを導き出し、売上げアップに効果的な商品配置を短時間で見つける、といった具合です。
生産性の向上から防犯効果、そしてAIデータ活用による経営戦略まで、幅広く使えるのがネットワークカメラの特徴です。
【IoT導入前の基板作り⑤】作業効率を大幅アップさせる複合機
プリンター・FAX・スキャナなど、オフィス業務に欠かせない存在の複合機は、使用量に見合った性能のものを選ぶことで、作業効率を大幅にアップさせることができます。
印刷スピードが遅い・皆が集中して使う時間帯に待ち時間が長く発生するなど、「複合機待ち」が日常になっている場合は、機種の見直しをするのがおすすめです。
ちなみに、適正な複合機選びの目安には、機種ごとに提示されている毎分の印刷速度(連続複写速度)が役立ちます。
まずはオフィスで1日あたり何枚印刷しているのか?を概算し、それを分単位に直していけば、どのくらいの連続複写速度を持つ複合機を選ぶべきか基準が見えてきます。
【IoT導入前の基板作り⑥】顧客情報の一元管理と見える化・分析で次の戦略に活かせるシステム(CRM)
これまでの顧客管理方法と言えば、
- 営業担当者、もしくは部署が個別でデータを管理している
- 社員で共有できるデータベース化がされていたとしても、電話番号と名前、購入履歴、名刺の情報程度しか書かれていない
のが一般的でした。
これでは担当者が変わった場合に効果的なアプローチがおこなえなかったり、次の提案につなげるための参考事例が見つけにくく、当てずっぽうになってしまう可能性が考えられます。
このように、蓄積しつつも生かし切れていなかった顧客情報を、売上げアップにつながるように整理整頓するシステムがCRM(顧客管理システム)です。
CRMを導入すると、詳細な顧客情報が一元管理できるようになります。
- 顧客名
- 連絡先
- 購入した製品とその目的
- 商談中の内容(使用した営業資料)
- 予算
- 購入頻度
- 現在のフォロー状況
- 過去のクレーム履歴
・・・など、顧客それぞれの状況をオフィス全体で共有可能です。
これにより、担当者が変わることでベストな提案ができないというロスを防ぐことができます。
また、CRMシステムで顧客情報が蓄積されていくと、「この商品を買った人は、次にこっちの商品を買いやすい」のように、傾向が分析できるようになります。(顧客情報のビッグデータ化)
この分析したデータを新規顧客へのアプローチに用いていくことで、さらに経営効率アップにつながります。
【IoT導入前の基板作り⑦】インターネット上に電話環境を整えるクラウドPBXで、顧客対応が良質に
オフィスに欠かせないビジネスフォン。
外線、内線、ダイヤルインなどの電話環境は、従来は必要人数分の電話端末と、それらを連携させる交換機(PBX)を社内に設置する必要がありました。
その交換機(PBX)をインターネット上に設置し、専用の電話端末がなくても通話できるようにしたのがクラウドPBXです。
クラウドPBXを導入すると、次のことができるようになります。
- 携帯電話、スマートフォン、タブレット、PCなど、多様な端末でビジネスフォンとしての機能が使える(専用の電話端末が必要ない)
- 複数の拠点の端末を内線化できる(遠隔地の拠点とも内線でつなげられる)
- インターネットにつながっていれば場所を問わず通話できる(保留・転送・内線が社外でも可)
- 自動音声対応や適切な部署へ着信を割り振ることで取り次ぎ時間を削減
- 通話録音や顧客管理システム(CRM)との連動で顧客対応のレベルアップ
特に顧客管理システム(CRM)とクラウドPBXの連動は、顧客満足度アップにつながります。
この2つを連動させると、着信時に端末の画面にCRMの顧客情報が表示されます。
この情報を見ながら会話することにより、適切な電話対応がおこなえ、販売のチャンスやクレーム率の低下につながります。
- 作業レベルに合った性能のPCを導入することで、処理速度が遅い・途中で固まるなどの時間的ロスを減らす
- 機密情報を社内サーバーで管理することで、情報漏洩のリスクを減らす(未来に起こる可能性のある損失を予防しておく)
- セキュリティの高い通信トンネル(VPN)を構築することで、拠点間の情報のやりとりが安全かつスムーズになる
- ネットワークカメラでオフィスの映像を管理することで、勤怠管理や勤務態度向上、AI解析によるマネジメントが可能
- 作業レベルに十分対応できる複合機を使うことで、印刷待ちなどの時間的ロスを減らす
- 顧客管理システム(CRM)でデータを一元管理して蓄積していくことで、最適な販売戦略が作れる
- 多様な端末で利用できる電話機能クラウドPBXで、顧客対応のレベルアップが図れる(CRMと連動するとさらに効果あり)
普段オフィスで使い慣れている通信機器を、業務のレベルに合うように最適化するだけで、ここまで生産性アップにつながります。
まずは身近な通信機器の見直しが、本格的なIoT化への第一歩です!
IoT導入は「目先の利益よりも長期的なビジョン」で判断すべき!
「そもそもうちの会社にはIoT化が必要なのか?」
この問いに対する答えを明確にするならば、事業が目指す理想の将来像から逆算します。
「年間いくらコストカットできるから」というような、点でのメリットの捉え方ではありません。
理想の将来像へ向かうために障壁になっている問題は何か?
それを解消するために必要な環境はどうやって作るか?
その先にIoTは取り入れられないか?
といったような、適材適所の感覚が重要です。
今後、IoTやビッグデータを利用した経営効率化の波は、間違いなく押し寄せてきます。
その波に乗るビジネスと乗り遅れるビジネスでは、目に見えて差が開いていくでしょう。
あなたの会社がこの先5年後、10年後に達成したい目標は何ですか?それに向けて、「仕組み化」できるところはどこでしょうか?
IoT、ITを、ぜひコストカットのツールとしてだけでなく、生産性向上(=利益向上)のためのツールと捉えて取り入れていきましょう。
まずは身近な通信機器の見直しからスタートして、ビジネスの利益向上につなげていきましょう!