ここ数年、よく見聞きするようになったRPAですが、その意味や機能についてどこまでご存知でしょうか。
そう言えば聞いたり見たりしたことがある方、あるいは取引先との会合で「RPAですよね、もちろん・・・」とちょっと背伸びをしてしまった方や、本やネットでちゃんと勉強してますという方まで様々かと思います。
巷ではRPAがホワイトカラーの生産性を向上させ企業業績が飛躍的にアップする、なんていい事ばかりが囁かれていますが、実はこのRPA「日本の中小企業にとっては諸刃の剣になりそうな危険な代物」なのかもしれません。
評判だけで導入することがいいことばかりではなさそうです。どんなところに注目しなければならないか一緒に考えていきましょう!
RPAとは?
そもそも、RPAとはどのようなものなのでしょう。機能や役割などRPAの本質についてはどのくらい理解されていますか?
RPAは、(Robotic Process Automaton) ロボッティック・プロセス・オートメーション、直訳すれば「ロボットに業務を自動で」という意味になります。
RPAの定義も「ホワイトカラーのデスクワークやパソコン入力業務などの定型化したオペレーション部分を自動化するという意味」で使われています。
すでに多くの企業でもブルーカラーに代わり工場の生産ラインや接客・案内業務、医療や介護現場に様々は産業ロボットが投入されています。その波がいよいよオフィス内の事務仕事にも押し寄せてきていると考えれば分かりやすいと思います。
オフィス内での多種多様な業務を書類やデータを生産する工場に見立て、そこで行われているPC作業のうち定型化というやり方が決まっているオペレーションを自動で行ってくれるのがRPAなのです。
広義と狭義のRPA マネが得意なだけじゃない
RPAがPC作業に関わるロボットだと理解してもらったところで、少し違う角度からのRPAも知っておいて欲しいと思います。RPAはこの先何年も登場し続けると思われますが、ひと言でRPAと言ってもその使い方には広い意味でのRPAと狭い意味でのRPAがあります。
まず、RPAを広い意味で使う場合は
class1【第一段階】RPA(Robotic Process Aotomation)
class2【第二段階】EPA(Enhanced【強化】 Process Automation)
class3【第三段階】CA(Cognitive【認識】 A(utomation)
のclass3までの全体を指します。
例えば「RPAのclass3(第三段階)はCAと言ってAIが・・・」といった使い方です。
もうすでに使っている場合には「うちの会社もようやくRPAのclass1(第一段階)に入ったよ」と言えることになります。
次に、RPAを狭い意味で使う場合はオフィス内での実務を任せるために導入しようとしているソフトウェアそのもののことを言います。
つまり、RPAというのはオフィス内での生産性向上を段階的に実現する仕組みであり、それと同時に一つ一つのオペレーションを担ってくれる一つのソフトウェアの両方を指します。
あるオペレーション業務のために導入するRPAが年月を経て成長したり、拡充していくのがRPAです。人が行ってきたオペレーション業務をそっくり真似できるRPA(class1)からclass3のCAになると自ら考え業務を行うRPAが想定されています。
RPAの正しい作り方
RPAというPC作業ロボットの導入は少しやっかいな一面があります。
それは、RPAはソフトウェアなのか?それともシステムなのか?をちゃんと理解しておく必要があるところです。
ロボティックと言うとロボットが隣のデスクで自分の分身のようにキーボードを叩いてくれる姿を想像させますが、実際にはサーバーやPCにインストールされたソフトウェアがやってくれます。
その意味ではRPAがソフトウェアであることに疑問の余地はありません。ですが、ただそれだけでRPAが動いてくれるわけではありません。
「どのようにRPAを動かすか」というシステムがないと、このソフトウェアは動かないのです。そう考えるとRPAはシステムでもあると言えるでしょう。
そして、そのシステムは他の誰でもない、導入しようとする人や会社自身が構築しなければなりません。
PCではWindowsのシステムにExcelを走らせれば集計やグラフを作ることができます。それと同じように自分が作ったシステムにRPAを走らせれば大きな力を発揮してくれます。
ただ、そのシステムが作れないと最新技術のRPAも宝の持ち腐れになってしまいますから注意したいところです。
実はやっかいなRPA
では、そのRPAが正しく動くためのシステムはどのようにして作ればいいのかを見てみます。
以下の4つのポイントを確認してください。
①会社や社員個人がRPA導入目的を明確にする
②目的のために業務を移行しRPAを動かしてみる
③個人や部署内でRPAが役に立つことを確信する
④社員間、部署間でRPAを認め合う
このフローの中でのポイントは②と③です。
②では、①の目的のためにRPAは従来の業務プロセスの中で人に代わって業務を遂行してくれるわけですが、業務全体のどの部分をRPAに任せるのかをハッキリさせておく必要があります。1分、1時間単位で業務内容を塊で捉え、人パートとRPAパートを切り分け実際に仕事をしてもらう、といったイメージです。
この作業は一度に多くをRPAに求めると大変ですが少しずつ任せることも可能です。
③では②のRPAパートが上手くいった場合、その事が自分や部署にとって役立っているかを検証しましょう。役に立たないものを導入する必要はありません。
このフローはRPAを導入する前でも導入しながらでも使うことができます。最初の一例を成功させるために、そして二例目、三例目と拡充していくために常に必要な行程になっています。
このように、RPAそのものはホワイトカラーの業務代行ロボットなのですが、実は人がやってきた業務を教え込まないと何もできません。
「そんな事をするくらいなら自分でやってしまった方が速い」と思われがちなやっかいな行程をクリアしていかなければならないのです。
ちなみに、RPA導入の失敗事例のほとんどが①から④のどこかに原因があったと言われています。システム作りが失敗を回避する上で重要なことだと認識しておきましょう。
RPA導入の目的とは
RPAの導入に一番必要な要素は何と言っても「目的の明確化」です。
今まで導入した企業などによるとRPA導入目的には次のような内容が多いようです。
①業務の効率化
②業務の24時間365日化
③業務の人的ミスの軽減もしくは0(ゼロ)化
④業務のテレワーク化
⑤商機喪失の回避や戦略構築のスピード化
⑥会社と社員の意識改革と生産性の向上
⑦会社業績や信用の向上と社員の働き方改革
最初に掲げる目的は①~④のどれでも構いませんし、全てでも構いません。ですが導入することで達成できる到達点として会社と社員の間で必ず共有しておきましょう。
また、⑤~⑦は経営サイドの戦略目標と言えるでしょう。何を目指し、何処に向うのかを会社全体で共有しておくことが何より重要です。
うまくいかない原因と落とし穴
会社や社員にとっていいことずくめのRPAですが、その導入に当たっては慎重さが求められます。拙速に導入を進めていくと必ずといっていいほどうまくいきませんので注意して下さい。
RPA導入がうまくいかない原因
原因その1:段階を経た導入をしない
まず、RPAの導入には大切なプロセスがあることをご存知でしょうか。
経営者がいきなり導入を決め、ソフトウェアを購入し社員全員のPCにインストールというような暴挙に出てはいけません。
【RPA導入=経費削減+仕事の効率化+人員再配置による生産性の向上】などであることに間違いはないのですが、この方程式が成り立つためには以下の3つのプロセスを踏んでいく必要があります。
1stステップ:PoC(評価・検証)
2ndステップ:部分導入
3rdステップ:全社導入
特に、この1stステップは前述したRPAのシステム構築に類似していますが、実は大きな違いがあります。
PoC (Proof of Concept)プルーフオブコンセプトは(概念の実証)という意味で使われているIT用語です。簡単に言えば「こんな事できたらいいな」という概念を実際にカタチにするために評価や実証することをいいます。
つまりPoCは導入をするかしないかを決めるために行い、RPAのシステム構築は導入を決めたら行うという違いになります。
PoC抜きに社長の独走やIT担当者が先走っての導入は上手くいかないケースが多いようです。何故なら「RPAの導入が社員から仕事を奪う」という誤解や不安が広まるかもしれないからです。そうならないためにPoCは誤解や不安を取り除くための最初の入り口として機能します。RPAが活躍する場所は第一線の現場です。現場の社員をしっかり巻き込んでいきましょう。
原因その2 RPAへの過信
RPAはそれまで人が行ってきたオペレーションを模倣するソフトウェアです。AIのように知能は持ち合わていませんから【RPAに何をさせるのか】を使う側が考えないとなりません。
また、一度覚え込ませたオペレーションは間違いなく行ってくれる反面、中身の情報におかしな点があってもそのままスルーして続行されます。
つまり、一連のオペレーションをRPAが行うことはある意味簡単なのですが、RPAが作ったデータが信頼できるものなのかはRPA自身は判断してくれません。
このことはRPAを過信することなく、仕事を任せるスタート段階から、途中で判断を要する事態になった時の対処方法や最後に出来上がったデータが正しいかをチェックするゴールまでをしっかり人がRPAを管理していくことが必要だということを意味します。
原因その3 RPAへの移行が難題
人が頭と時間を使って作り上げてきたオペレーション業務をRPAに移行するためにはそのオペレーションが定型化(規則性や法則性を伴っているもの)されていなければなりません。例えば、同じデータ入力オペレーションをA・B・Cの3人が違う手順で行っている場合どれか一つに集約するか、3つのやり方をベースにしてRPAに移行し易いオペレーションに改善していくことが求められます。
それぞれの人が頭で考え改良を加え最善に仕上げたオペレーションを持ち寄って規則化や法則化していく、その作業がなかなか大変で上手くいかない要因になっているようです。
RPA導入の落とし穴
RPAはその特性と利用価値を把握して導入すれば企業や社員にとって素晴らしいパートナーになってくれるソフトウェアですが、導入がうまくいかないと今までになかったような問題が生じる事もありえます。
◎導入が目的化すると移行作業に人手が取られ生産効率が悪化する
◎導入したのはいいが、使いこなすことができずに導入費用が無駄になる
◎誤解によって仕事を奪われる恐怖が職場を覆い社員のモチベーションが低下する
◎運用が軌道に乗るまでの業務の滞りが生産性の低下や会社の信用低下を招く
◎運用上の責任のあり方が不明瞭
といったような、まるで落とし穴に落ちてしまったような内容ですが、今ではいずれも導入前に想定し回避できる内容になっています。
RPAが会社や個人にとって「やっかいな代物」や「落とし穴」になってはかないません。あらかじめリスクを知った上でRPA導入を計画するのが最良のポイントだと言えます。
失敗しないための対策
RPA導入がうまくいかない原因や落とし穴はが導入前に導入後の「あるべき姿」を会社全体で共有することで回避できます。
その「あるべき姿」とは何か。そしてそれは「何のためか」という目的を導入理由としてしっかり共有していきましょう。
例えば導入目的①の【業務の効率化】を掲げた場合「効率を上げ残業を無くしていく」というあるべき姿を発表し、そして「残業をなくすことでより働きやすい職場の構築と社員の健康維持のため」と言う目的を社員全員と共有しましょう。
このような図式を作れればRPA導入に後ろ向きの社員はいなくなるはずです。
それでも、実際には自分の仕事(業務)にどう関わってくるのかが分からないうちは誤解や不安が生じてくるものです。
そのための回避策としては
①RPAに任せる業務内容や業務量を見える化する←部署に導入or個人に導入かを見える化し業務の変化をイメージしてもらうため
②担当者にRPAの活用や運用を任せる←担当者がRPAの仕事の管理・評価することでRPAの適正業務を構築していくため
③RPAが作業を中断しなくて済むオペレーションを新たに確立する←作業の共同化を図るため
④RPA導入によって得られた時間や費用をどう活用するかを計画化し人事(手当)や社員教育などにフィードバックする←誤解を生ませずやる気の喪失を防ぐため
といったことがあげられます。いずれも、RPAと人との関りを重視している内容です。
大切なことはRPAが業務効率を上げるのではなく人がRPAに業務効率を上げさせる、という視点を持つことだと思います。
まとめ
RPAはうまく活用できれな大きな力になり得るパートナーですが、日常業務をこなしながら仲間にしようするとなかなかやっかいなパートナーでもあります。
先を行っている企業ではRPAの力で多くの成果が得られているようですが、まだまだ焦る必要はありません。下手をすると社員を悩ます結果を招くかもしれないものをあわてて導入する必要はないのです。
日本企業の最大のストロングポイントは「人を大切にする」ところです。それを踏み外すことなくRPAの導入は進めていきましょう。実は、RPAはPC作業を肩代わりすることによって、「人に、より人らしい仕事」をしてもらうために生れてきたのかもしれませんから。
働き方の改革は社員を大切にすると共に成果も求められています。そのためのRPAなら使わない手はないかもしれません。
RPAに関しての業務効率化はもちろん、社内の環境を整えるベストな提案を我々は行なっております。生産性とより社員が仕事しやすい環境構築を目指しましょう。
この記事では、中小企業のRPAがもたらす影響など導入の是非についてをお伝えしていきます!