ロボットの導入によるITの活用方法の1つとして、近年話題に上がることの多いRPA。
膨大な量の配送物の管理を行う物流業界や、膨大な量のデータを分析する機会の多いIT関連の会社では、RPAは業務効率化への近道として注目を浴びているツールです。
RPAという言葉を知っている人は多いものの、AIとの違いや具体的な活用方法についてを知っている人は少ないのではないでしょうか。
この記事では主に、RPAについての以下の項目についてを解説します。
- AIやマクロとの違い
- RPAを活用できる業務・活用できない業務
- RPA導入のメリット・デメリット
「上司から”RPAやAIを導入・活用して業務を効率化して欲しい”という相談を受けるが、そもそも何をどうやって改善したらいいのかわからない」
「RPAやAIの導入には興味があるため、自分の考えていることが実現できるかを知りたい」
そんな方は是非、この記事に目を通してみてください。
RPAとは
RPAとはRobotic Process Automationの略であり、日本語に訳すと”人間が行っている作業をロボットを使って自動化すること”という意味になります。
RPA=ロボットによる自動化といった認識でも間違ってはいないものの、似たような用語にExcelなどで使われることの多いマクロや人工知能技術の一つであるAI(Artificial Intelligence)があります。
RPAという言葉はマクロやAIと同一視されがちですが、これら3つのIT用語の定義は大きく異なります。
以下段落ではRPAやマクロ、AIの違いについてを解説します。
RPAとマクロの違い
RPAとマクロにはどちらも「自動化」といった言葉が含まれているものの、定義上での意味合いはそれぞれ大きく異なることが特徴です。
RPAは「コンピュータの操作をロボットに記憶されるツール」のことを指すため仮想知的労働者と言われているのに対し、マクロは「コンピュータの操作を自動化する機能」として定義されています。
RPA=自動化ツールであるのに対し、マクロ=自動化機能として覚えておくと便利ですね。
更に似たような言葉として、マクロのプログラムを構成する機能を指すVBA(Visual Basic for Applications)があります。
RPAとAIの違い
では、RPAとAIの違いはどのような点があるでしょうか。
RPAは「人間が定めたルール通りに作業を行うツール」のことを指し、仕様やルールの変わらない作業を人間以上の効率・スピードで行えることが特徴です。
対してAIは「人間の頭脳に取って変わることのできるツール」であり、RPAにはない認識・判断・命令といった機能を兼ね備えています。
RPAが「人間の手足」の代わりになって作業を行うのに対して、AIは「人間の頭脳」にとって変わることのできるツールと覚えておきましょう。
RPAにできること
ここからは、RPAの導入や活用によって実現可能である業務の特徴についてを解説します。
「単純作業を人間が決めた通りそのまま行う」ことに長けているRPA。導入にあたっては以下4種類の業務が候補として挙げられます。
業務フローやルールが決まっている定型業務
RPAは業務フローやルールが決まっている定型業務を行うのに向いているため、これらの業務への導入には労働時間や人材の活用面において大きなメリットがあります。
日々同じ業務を手作業で行っている従業員が複数いる場合、これらの作業をロボットによって代替させることによって、以下のような効果を期待できるようになります。
- 労働時間(稼働時間)を問わずに作業を行わせることができる
- 機械の誤作動・誤操作などのヒューマンエラーのリスクを低減させる
- 業務の過程における怪我や物品の破損のリスクを減少させる
大量のデータ処理
人間が膨大な時間を費やす必要のある大量のデータ処理も、処理の方法やルールさえ決まっていればRPAの導入によって自動化することが可能です。
RPAの活用によって大量のデータ処理をロボットに任せることで、業務速度の向上に加えて人間が起しがちな入力・操作ミス、疲労による生産性の低下の心配もなくなりますね。
スクレイピング(データ処理)
スクレイピングとは「大量の画像データを収集・処理する」「インターネット上の情報を処理してCSVファイルに格納する」作業を指すため、こちらもRPAの導入が比較的しやすい業務です。
インターネットを活用するとなるとAIが必要と考えられがちですが、情報の検索においてのルールや収集方法を予め人間が決めておくことで、ロボットに作業を任せることが可能になります。
RPAの活用によってデータを処理し、その結果に基づいて人間が次のステップである状況把握や次の施策の考案などを行うことができれば、業務の効率はより一層上がりやすくなるでしょう。
データ分析
膨大な量のデータを分析する作業も、RPAの活用が比較的しやすい業務の一つです。
予めロボットにデータ分析のルールをプログラムとして覚えさせておき、作業を代替させることで人間よりもより速く精確に膨大な量のデータを分析出来るようになります。
“RPAの活用によってロボットにデータ分析を行わせ、AIの活用によって分析結果に基づいた行動を自動化する”といった組み合わせ方も期待出来ますね。
RPAにできないこと
ここからは、RPAにできない業務の特徴についてを述べていきます。
RPAは「単純かつ膨大な作業」を行うことに特化しているものの、以下のような「複雑かつパターンが決まっていない業務」を行うことは出来ません。ぜひ目を通しておきましょう。
判断・決断が必要な業務
その場の状況に応じての判断・次に取る行動の決断を伴う業務は、RPAの導入には向いていません。
RPAには「人間の脳」の機能が備わっていないため、事前にルールとして組み込まれていない状況が発生しやすい業務は、状況判断能力を持つ人間が行う必要があります。
業務フローやルールが決まっていない業務
業務フローやルールが決まっていない業務は、毎回のシチュエーションにおいて人間の判断が必要となるため、RPAの導入対象とはならないのが特徴です。
パターンが決まっている業務であれば新たにルールを組み込むことでRPAを活用することも可能になるものの、一つでも違うパターンが存在するとRPAは対処することが出来ないので注意しましょう。
イレギュラーな対応が多い処理
イレギュラーな対応が必要となる機会が多い業務も、RPAの導入だけでは対処することが出来ません。
特にお客様の要望や意見に依存されやすい業務の場合、どのような対応が必要になるかを人間でもパターン化することが困難なため、RPAを活用する環境を整備することはほぼ不可能です。
PC操作のみで完結しない業務
RPAは「PC上での定型業務」に特化しているものの、PC操作だけでは完結しない業務を行う能力はないため、こちらも人的資源やAIの活用が必要となります。
業務の単純なPC操作の部分だけをRPAの活用によって代行することは可能なため、このような業務にはRPAとAIの併用、あるいは人間が引き続き行うことが現実的です。
これら4つのパターンの業務の共通点は、全て「その場の状況に応じて考える」必要があることです。
RPAは人間が予め決めたルールと異なる処理が一つでもあると対応できなくなるため、毎回の状況判断を伴う作業には向かないことを押さえておきましょう。
RPAの活用事例
RPAの導入は業界問わず幅広く行われていることが特徴であり、例として挙げられるのは以下の業務などがあります。
- 社内書類の管理など日常的な定例業務
- 帳簿処理や経費生産などの経理業務
- 商品の受注、納品、販促申請の管理
- 顧客データの分析
RPAの実際の導入事例については、以下の記事も参考にしてみてください。
https://iot-navi.net/rpa-illustration/
RPA導入のメリット
RPAを導入することで得られるメリットは、大きく分けて以下の3つが挙げられます。
- ・定型業務をロボットに代替させることで、ミスやヒューマンエラーを防ぐことができる
- ・単純作業を自動化することで、業務のスピードアップや残業時間の削減に繋げることができる
- ・従業員を人間にしか出来ない業務に専念させることで、社内全体の業務の効率化を実現できる
RPAの導入によって活用できるロボットはまさに「疲れを知らない人間の手足」であり、24時間より高速かつ精確に作業を代替させることが可能となることが特徴です。
単純かつ多くの時間を要する作業をロボットに任せることで、その場の状況判断を伴う業務やお客様とのやりとりなど人間のみが行える仕事に人的資源を回すことができるようになりますね。
RPA導入のデメリット
RPAは単純作業の効率化や人間の労働時間の削減において大きなメリットを産出するものの、以下のようなデメリットもあるので注意が必要です。
- ロボットの誤作動や予期せぬ動作により、業務に影響が出る場合がある
- インターネットを介した攻撃者により、ロボットの内部システムに潜入されて情報が漏えいするリスクがある
- RPAの操作マニュアルなどの引き継ぎを十分に行わなかった場合、業務がブラックボックス化(認識の欠如が発生)してしまう
- 人間がロボットに対する命令を間違えた場合、その通りに動いてしまう上にミスに気づきにくくなる
RPAの導入におけるメリット、デメリットについては以下の記事で詳しくまとめています。ぜひ参考にしてください。
RPA導入のプロセス
RPAの導入には、大きく分けて以下の6段階のステップがあります。
- RPAを活用する業務の見定め
- 対象となる業務の流れや時間を把握
- RPAの運用ルールの決定
- ロボットの開発・導入
- RPAの動作テスト
- RPAの導入、ロボットの運用開始
中でも一番初めのステップとなる“RPAを活用する業務の見定め”のステップは最も肝心であり、場合によってはRPA導入自体の成功か失敗が決まる要素にもなりかねません。
以下の記事では実際にRPAを導入した中小企業の成功、失敗例をまとめています。
まとめ
RPAは私たち人間とは違って学習、判断などの能力を持たないものの、人間が決めたルールに沿って膨大な量の作業を高速かつ精確にこなしてくれるツールです。
代替できる作業が明確に決まっているRPAだからこそ、使う側の人間が特徴や導入に向いている業務についてしっかりと把握しておく必要があります。
働き方改革が推奨され、労働人口の減少が深刻な問題となりつつある現代社会。
私たち人間にとっての「物理的な右腕」としての真価を発揮する可能性を秘めているRPAの導入は、業務の生産性の向上や社内環境の改善へのキーポイントとなるでしょう。