社内のIT環境において、システムやサーバーを冗長化しておくことはとても重要です。
しかしながら
実際に冗長化とはどんなことをするのか?
なぜ冗長化する必要があるのか?
冗長化することでどんなメリットがあるのか?
いろいろ気になるところです。
今回は、冗長化の基礎知識やメリットデメリット、冗長化の必要性についてお伝えします。
冗長化とは
冗長化とは、一般的に「無駄が多い」「余分」「重複」といった意味を表しますが、ITにおける冗長化とは、例えばパソコンに何らかの障害が発生した場合に備えてパソコンと同じものを予備システムとして準備しておくことをいいます。
よく二重化、三重化とありますが、二重化とは万一に備えて同じシステムを2つ準備しておくことで、本体と別に予備システムが1つあると二重化、2つあると三重化になります。
冗長化は、予備システムが複数あることを指し、二重化も三重化もそれ以上予備システムを持つことも冗長化と言います。
システムやサーバーを冗長化する必要性
システムやサーバーを冗長化する必要性は、パソコンに何らかの障害が発生した場合に備えてパソコンと同じものを予備システムとして準備しておくことですが、例えばバックアップを取っているだけではダメなのでしょうか?
システムやサーバーを冗長化する必要性を3つ紹介します。
- BCP策定が重要視されているため
- システムの可用性を高めるため
- サーバーの負荷を軽減するため
それでは、一つ一つみていきましょう。
BCP策定が重要視されているため
システムやサーバーを冗長化する必要性の一つ目は「BCP策定が重要視されているため」です。
BCP対策のBCPとは、事業継続計画のことをいいます。
中小企業庁HPでは、次のように書かれています。
企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。
【出典】中小企業庁ウェブサイト「中小企業BCP策定運用指針」(https://www.chusho.meti.go.jp/bcp/contents/level_c/bcpgl_01_1.html)
企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合、特に医療機関や金融機関は1秒でも早く復旧しなければ取り返しのつかない事態になる可能性が非常に高くなります。
したがって、どんなことが起こっても予備システムですぐに復旧できるようシステムやサーバーを冗長化する必要性があるのです。
システムの可用性を高めるため
システムやサーバーを冗長化する必要性の二つ目は「システムの可用性を高めるため」です。
可用性とは、システムが異常なく継続的に稼働できる能力のことをいいます。システムの可用性が高いということは、万一のときでも予備システムですぐに復旧し、安定した稼働が見込めるということです。
自然災害または、サイバー攻撃などの人的災害、人的ミスなどによりシステムが停止すれば、医療機関では人命に関わりますし、金融機関では財産に関わりますし、一般企業でも営業に影響を及ぼすことになりかねません。
バックアップだけでは、復旧に時間がかかります。その点、冗長化であれば、同じシステムが一つ以上存在し、入れ替えることにより素早く復旧の対応ができ、システムの可用性を高めるため、システムやサーバーを冗長化する必要性があるのです。
サーバーの負荷を軽減するため
システムやサーバーを冗長化する必要性の三つ目は「サーバーの負荷を軽減するため」です。
何らかの要因でアクセスが集中するとサーバーに負荷がかかり、安定した稼働ができなくなることがあります。一つのサーバーで情報を処理しようと思うとサーバーアウトしてしまうかもしれません。
冗長化をしていれば、もし一つのサーバーにアクセスが集中して負荷がかかっても、冗長化されたサーバーが別々に情報を処理します。このように分散して処理できるようになるため、システムやサーバーを冗長化する必要性があるのです。
冗長化するべきシステムの種類
冗長化は、1つのシステムだけしておけば安心というわけではありません。
例えば、サーバーやネットワーク、データベースなどの不具合も事業に大きく関わる場合もあります。
それぞれシステムを冗長化しておくことで、万一の時でもより安全に事業を続けることができるのです。
それでは、サーバーやネットワーク、データベースの冗長化の必要性について、より詳しくみていきましょう。
サーバーの冗長化
冗長化すべきシステムの一つ目として「サーバーの冗長化」が挙げられます。
サーバーが何らかの障害でダウンしてしまうと、サーバーが復旧するまでの間、業務全体を停止しなければならないかもしれません。
しかし、冗長化により予備のサーバーが事前に用意されていれば、何かあったときにスイッチを切り替えればいいだけなので、停止時間の短縮につながります。
このようなことから、サーバーの冗長化が必要になるのです。
ネットワークの冗長化
冗長化すべきシステムの二つ目として「ネットワークの冗長化」が挙げられます。
ネットワークが不可欠な現代では、ネットワークが数秒でも使用できなくなるだけで大きな問題に発展することがあります。
そのため、ネットワークメイン回線と予備回線を複数もっておけば、何らかの障害が発生しても、予備回線に切り替えることもできますし、他にもルーターを複数台持つなど、業務停止にならないよう努めることができます。
このようなことから、ネットワークの冗長化が必要になるのです。
データベースの冗長化
冗長化すべきシステムの三つ目として「データベースの冗長化」が挙げられます。
お客様情報などを保存するデータベースの場合は通常のバックアップ対応でも問題はないともいえます。しかし、基幹システムに深く関わっている場合や万一データを破損してしまう場合など大きな問題に発展することはないとは言えません。
そのため、普段はマスターとなる1台が全ての管理・制御を担当し、その他の数台はスレーブとなり、マスターの制御によってデータの複製(バックアップ)を行うを利用することで、アクセスが集中して負荷がかかったり、何らかの要因で故障したりしてもスレーブの中のひとつがマスターに切り替わって処理をし、データを守ることができます。
このようなことから、データベースの冗長化が必要になるのです。
冗長化のメリットとデメリット
ここまで、システムやサーバーを冗長化する必要性やシステムの種類について紹介させていただきました。
この章では冗長化のメリットとデメリットについてお伝えします。
冗長化のメリット:企業活動停止を防ぐ
企業の活動停止になる可能性は次のようなことが挙げられます。
- サイバー攻撃などの人的災害、人的ミスなどによりシステムが停止
- 地震や落雷といった自然災害による停電など、外部的な要因
- 自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態
通常のバックアップでは、システムを復旧させるのに時間がかかりますが、冗長化していれば、予備として同じシステムが別に稼働しているという状態であるため、復旧に時間がかからず企業活動を再開できます。
冗長化のデメリット:コストがかかる
予備として同じシステムを別に稼働させるにはコストがかかります。
例えば、サーバーを冗長化するには「オンプレミス型」であるサーバーを設置する方法と、「クラウド型」であるクラウドサーバーを利用する方法と2つあります。
「オンプレミス型」であるサーバーを設置する方法は、自社内にもう一つ予備サーバーを設置するため、自社用にカスタマイズできる利点はありますが、導入からメンテナンスまで全て自社でおこなうため、高コストになります。
「クラウド型」であるクラウドサーバーを利用する方法は、クラウド上に予備サーバーを設置するため、導入からメンテナンスまで全てクラウドサーバーを提供する事業者におまかせになり、運用はとても低コストになります。
どちらにしても、予備として同じシステムを別に稼働させることは大なり小なりコストがかかるものだとご理解ください。
冗長構成で効率的な冗長化を
効率的な冗長化をするためには、冗長化構成が重要になります。
例えば、サーバーを2台置いて1台を予備にしたり、複数台を同時に稼働させていたりと冗長化構成にはいろいろなやり方があります。
冗長化構成の代表的な構成には「アクティブ/スタンバイ構成」「アクティブ/アクティブ構成」「マスター/スレーブ構成」「マルチマスター構成」の4つあります。
どれも効率的な冗長化構成ではありますが、それぞれの特性があるため、自社にあった冗長化構成を選択しましょう。
代表的な冗長化構成は次の記事に詳しく説明しております。合わせてご覧ください。
まとめ
冗長化とは、一般的に「無駄が多い」「余分」「重複」といった意味を表します。
しかしながら、ITにおける冗長化とは、例えばパソコンに何らかの障害が発生した場合に備えてパソコンと同じものを予備システムとして準備しておくことをいいます。
システムやサーバーを冗長化する必要性は、次の3つが挙げられます。
【システムやサーバーを冗長化する必要性】
- BCP策定が重要視されているため
- システムの可用性を高めるため
- サーバーの負荷を軽減するため
また、冗長化のメリットは「企業活動停止を防ぐ」で、デメリットは「コストがかかる」です。
確かに、予備として同じシステムを別に稼働させるため、大なり小なりコストがかかりますが、自社に合った冗長化の種類や構成を選択することでコストをおさえることも可能です。
冗長化についてさらに詳しい内容は、この記事の下部にある「4つのDX実践白書」の中の一つ『インターネット速度の向上と突然のダウンを防止する「冗長化」』にて解説しています。
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